あんしん相続・遺言コラム

外国人オーナーが亡くなった場合の、土地・建物の名義変更の留意点(渉外相続登記)

北村 清孝 副代表 本町事務所長
司法書士(大阪第2549号)・簡易訴訟代理等関係業務認定(第212059号)

日本では、外国人の方が不動産を購入して所有することに大きな規制はありません。したがって、外国人の方が日本の不動産を購入して所有しているケースが少なからずあります。

そのような日本の不動産を所有している外国人の方がお亡くなりになった場合、その不動産の相続が発生することになります。しかし、その際の相続登記は、各国の諸制度の違いから、日本人が所有する不動産の相続登記とは異なる書類の添付が必要であったりと、通常の相続登記の方法では登記できません。

今回は、外国人の方が所有する不動産の相続登記特有の留意点をご紹介させていただきます。

相続証明書としての戸籍

相続登記には「相続を証する書面」の添付が必要です。日本国籍の場合、この相続を証する書面は「お亡くなりになられた方の出生から死亡までの除籍・原戸籍」と「相続人の方々の現在戸籍」がこれに該当します。

しかし、戸籍制度がある国は限られており、戸籍制度のない外国人の方の相続登記の際には、戸籍以外の書面で相続関係を証明する必要が生じます。

戸籍以外の相続を証する書面は、お亡くなりになられた方の国籍のある国によって様々であり、その国ごとに検討する必要があります。

主な国ごとの「相続を証する書面」

以下、よくご相談をいただく主な国ごとに、相続を証する書面に該当する代表的な書面を例示させていただきます。

①アメリカ・・・アメリカの公証人に該当する「Notary public」作成の相続関係に関する宣誓供述書(Affidavit Declaration)

②韓国・・・お亡くなりになられた方の出生から死亡までの韓国戸籍+基本事項証明書・家族関係証明書・婚姻証明書・入養関係証明書、相続人の基本事項証明書・家族関係証明書
(韓国には以前、日本と同様の戸籍制度が存在しましたが、現在は戸籍制度に代わって各種証明制度に代わっております。被相続人の相続証明としては、出生から死亡に至るまでの証明が必要となり、旧戸籍制度下の戸籍類も必要になります。)

③北朝鮮・・・朝鮮総連作成の相続証明書

④中国・・・中国の公証役場にあたる「公証処」作成の相続人に関する公証書、結婚公証書、相続人の出生公証書等

⑤シンガポール・・・在日シンガポール総領事館作成の宣誓供述書

手続きの流れ

渉外相続登記の手続きのおおまかな流れとしては、

①被相続人及び相続人の国籍、帰化の有無を確認
②被相続人、相続人それぞれの本国での出生証明、婚姻証明、死亡証明等家族関係を証明する公的書面を確認し、家族関係及び相続関係を把握
③被相続人・相続人が日本に居住していた期間があれば、住民票、閉鎖外国人登録原票記載事項証明書、帰化していれば帰化後の日本戸籍を確認
④上記各国ごとの相続証明作成の確認
⑤法務局と協議
⑥各種書類作成、調印、署名
⑦登記申請

という段取りになります。

日本語訳の必要性

また、前述の相続証明は、基本的に日本語でない言語で作成されるものです。このため、日本の役所である法務局に相続登記の添付書類として提出するには、各書面の日本語訳も作成する必要があります。この日本語訳は、正確な翻訳であれば誰が行ってもよく、専門的な翻訳家に依頼する必要まではありません。(当該相続登記を担当する司法書士あるいは依頼人本人が翻訳しても、その翻訳が正確なものである限り、問題ありません。)

まとめ

以上のように、渉外相続登記には単に相続登記の知識があるだけでは十分な対応を行うことは難しく、語学知識、海外証明制度等、通常の相続登記以外の広範な知識が必要とされます。また、渉外相続登記に必要な書面の中には取り寄せに1ヶ月程度要する書面もあり、書面の準備や法務局との協議、翻訳に時間がかかる場合があります。

スムーズに手続きを行うには、渉外相続登記に慣れた専門家司法書士に御相談いただくことをお勧めいたします。弊社にも経験豊富な司法書士が在籍しておりますので、気になる点があればお気軽にお問い合わせください。