あんしん相続・遺言コラム

これからの民法改正(債権法に関する改正)
⇒債権法に関する改正が2020年4月1日施行!押さえておくべき4つの改正点とは?

北村 清孝 副代表 本町事務所長
司法書士(大阪第2549号)・簡易訴訟代理等関係業務認定(第212059号)

平成29年5月26日に民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)が成立し、平成29年6月2日に公布されました。

この改正は、主に債権関係の規定の改正で、明治29年の民法制定後120年間ほとんど改正がなされていない部分でした。この大きな改正が、いよいよ2020年4月1日から施行されることになります。

債権法改正の概要

この2020年4月1日から施行される改正によって、現行民法で変わる部分は多々あります。その中でも、特に実社会で特影響の大きい改正部分の概要は次の4つとなるでしょう。

①「法定利率」の改正
②「保証人の保護」に関する改正
③「消滅時効」に関する改正
④「約款を用いた取引」に関する改正

以下に、この4つの改正点の概要を簡単に説明させていただきます。

①「法定利率」の改正

これまでの民法では、契約当事者間で利率や遅延損害金に関する合意がない場合に、適用される法定利率は年5%と定められていました。しかし、低金利状態が長く続いている昨今です。逆に法定利率が高すぎて不公平である、との指摘が以前からなされていました。そうした背景から、今回の改正で法定利率は年3%に引き下げられることになります。

さらに、市中の金利動向に連動して法定利率も変動する、いわゆる銀行のローンでいうところの変動金利のような考え方を新しく導入しています。

②「保証人の保護」に関する改正

まず、これから説明する今回の改正は、個人が保証人になる場合の保証人の保護のためのものです。法人が保証人になる場合は適用がありませんので、留意が必要です。改正のポイントは2点です。

その1:「極度額の定めのない個人の根保証契約」は無効に

個人が保証人となる場合で、根保証契約となる場合は、保証人が支払責任を負う上限となる極度額を定めておかなければ、保証契約は無効になります。

根保証契約とは、専門的で難しい表現になりますが、一定の範囲内の不特定の債務を保証する契約のことを言います。例えば、賃貸借契約の保証人となる契約が根保証契約にあたる場合がありますので、個人を保証人とする賃貸借契約では、保証人の支払責任の上限額を契約の中に定めておかなければ、保証契約部分が無効になるリスクがあるということになります。

その2:公証人による保証意思確認の手続の新設

個人が事業用融資の保証人になる場合、公証人による保証意思確認の手続をしないでなされた保証契約は無効になります。ただし例外もあります。債務者法人の取締役や、議決権の過半数を有する株主、あるいは債務者個人事業者の共同経営者など、事業の経営に関与する一定の者が保証人になる場合は、公証人による保証意思確認は不要とされています。

③「消滅時効」に関する改正

消滅時効とは、債権者が一定の期間その権利を行使しない場合、債権が消滅するという制度です。これまでの民法では、消滅時効によって債権が消滅するまでの期間は原則10年とされ、例外的に、職業別に短期の消滅時効期間を定めていました。(ex.医師の診療報酬は3年、飲食代は1年など。)

そのため、消滅時効を考える時に分かりにくいという弊害がありました。
今回の改正では、業種ごとに異なる短期消滅時効制度を廃止し、消滅時効期間は原則、「知ったときから5年」とされました。

④「約款を用いた取引」に関する改正

現代では、不特定多数の顧客を相手に取引を行う事業者が、あらかじめ詳細な契約条項を「約款」として定めておき、約款に基づいて契約を締結する場面が増えてきました。銀行の口座開設をするときに預金契約の約款集を渡されたり、ホームページの約款集を見てくださいと言われた経験はありませんか。
細かい字で色々書いてあり、実際に内容を全部読んでいない人も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

これまでの民法では、約款を用いた取引についての基本ルールは何も定められていませんでした。今回の改正では、新たに約款を用いた取引に関する基本ルールが次のように定められました。

  • 顧客が約款に記載された条項を認識していなくても、当事者間で約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき、あるいは、約款を契約の内容とする旨をあらかじめ顧客に表示して取引を行ったときは、約款に記載された条項について合意をしたものとみなされることになりました。ただし、顧客の利益を一方的に害するような不当な条項については無効となります。
  • 事業者による一方的な約款変更は、変更が「顧客の一般的な利益に適合する場合」、あるいは「変更が契約目的に反せず、かつ諸事情に照らして合理的な場合」に限って認められることになります。反対に、顧客にとって必ずしも利益にならない変更は、事前にホームページ等で周知することが必要とされました。

まとめ

今回お伝えさせていただいた改正内容は、債権法改正のごく一部の重要な改正点です。その他、瑕疵担保責任に関する改正、債権譲渡に関する改正、債務引受に関する改正、賃貸借に関する改正等、改正点は多々あります。

改正が現在の商取引にどのような影響を及ぼすのか、今行っている手続が改正後どのように変わるのかあらかじめ準備しておかなければ、予期せぬ紛争を引き起こす可能性もあります。早い段階で、民法改正が自身の仕事にどのような影響を及ぼすのかを知っておく必要があるでしょう。できることならば、その一助となれることができれば幸いです。

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