あんしん相続・遺言コラム


故人の銀行口座凍結…死亡後に遺族が預金・貯金を引き出す方法は?

水野 菜木 司法書士(大阪第4474号) 簡易訴訟代理等関係業務認定(第1512041号) 1級ファイナンシャルプランニング技能士 宅地建物取引主任者資格保有 行政書士資格保有

「銀行に口座をお持ちのかたが亡くなると、口座が凍結されて預金が引き出せなくなる」という話を耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。
もし口座が凍結されてしまったときはどうすればいいのか、関連する注意点も交えながらご紹介していきます

いつ、なぜ凍結される?

預金の名義人が亡くなると、すぐに口座が凍結されるとお思いの方もいらっしゃるかも知れません。
しかし、銀行は死亡の事実を知ってから、初めて口座凍結をします。
基本的にはご家族のかたから銀行へ死亡の通知をしない限り、凍結されるわけではないのです。
ですので、通知をするまではキャッシュカードを使ってATMでお金を出したり、公共料金やクレジットカードの引き落としをすることは従来どおりできる状況となります。

それでは、なぜ銀行は名義人の死亡を知ると口座の凍結をするのでしょうか?それは、一部の相続人が勝手に払い出したりするのを防ぐことで、後から他の相続人やその債権者から文句を言われないようにするためです。

凍結後の口座の払い出しをするにあたっては、故人の出生から死亡までの戸籍を全て精査して、相続人を判定し、その全員へ実印を求めるという取り扱いが原則的になっています。(預金残高によっては、相続人の一人からの申し出で解約に応じる金融機関もあるようです。)

凍結された場合、預金を引き出すにはどうしたらよい?

一般的には、以下のような書類などをそろえなければなりません。

① 銀行所定の相続届(相続人の全員が署名し、実印での押印が必要になります)
② 相続人全員の印鑑証明書
③ 故人の出生から死亡までの戸籍
④ 各相続人の戸籍
⑤ 通帳、キャッシュカード
⑥ 作成していれば遺産分割協議書等

銀行によっては必要となる書類が異なりますので、あらかじめ問い合わせておいたほうがよいでしょう。

相続人全員の実印と印鑑証明書が必要となるので、例えば音信不通のかたや、預金の分け方に反対するかたが一人でもいれば、引き出しは絶望的になることも考えられます。長期にわたり話し合いをするか、裁判(調停)などにより解決していくことになります。

<参考>
・相続人の判定について
「遺産相続の優先順位一覧とその相続割合。家系図を使ってご説明します。」
・戸籍の集め方について
「相続手続きに必要な戸籍謄本とは?取り寄せ方から手続きまでのやり方」

ちょっと待った!死亡した人の預金引き出しはまずい

とはいえ、葬儀代や入院費の支払いなどが必要で、凍結口座解約まで待っていられないのが現実かもしれません。しかし、凍結前に預金を引き出すのはやめてください。相続人同士でのちのち揉める原因になることもありますし、故人の死亡日の残高証明書や取引履歴などを見れば、あやしい出金は一目瞭然。返還を求められます。勝手に出金したことに不信感を持たれて、争続(争う相続)にもつながりかねません。

それでもやむを得ない支出に充てた場合は、使途を明確にするため、少なくとも領収書などを残しておくべきでしょう。

口座凍結、生前に対策しておくためには

争いにつながることも多い点から、凍結口座の解約には面倒な手続を求められます。生前の対策としては、遺言と生命保険の活用が考えられるでしょう。

まず、遺言は作成にあたり民法上の厳格なルールがあるものの、適法に作成しておけば、凍結口座解約にあたり相続人全員の実印は不要となったり、銀行への提出書類も圧倒的に少なくて済んだりする場合があります。とはいえ、銀行で遺言の内容や戸籍などを精査することに変わりはありません。口座に残ったお金を手にするまでには、ある程度の期間が必要となります。

そこで、支出が確実に見込まれるものについては、生命保険で準備しておく方法も有効です。例えば、喪主となるであろう方を受取人にして、葬儀費用相当額を死亡保険金として受け取れるように契約しておく、などの備えです。生命保険の死亡保険金であれば、保険会社に通知後、短期間で受け取ることができますし、あとで他の相続人に返還する必要もありません。

<参考>
・遺言の作成について
「遺言だけで相続できる?遺言が無効になり相続が難しくなるケースまとめ」
「遺言を残す際に注意すべき遺留分との関係とは?」

まとめ

生前は円満だったのに、相続をきっかけに家族同士でトラブルになることは、どのご家庭でも起こりうることです。しかし、誰しも相続で揉めることは避けたいと思っているはずでしょう。可能であれば、なるべく生前に対策されることをおすすめします。

「うちは自宅しか資産がないから、遺言なんて大げさだよ。」とおっしゃるかたもいらっしゃいますが、そのようなご家庭でも、争続になるケースが散見されます。

些細なことでもぜひ、わたしどもおおさか法務事務所にご相談ください。

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