あんしん相続・遺言コラム

遺言を残す際に注意すべき遺留分との関係とは?

水野 菜木 司法書士(大阪第4474号) 簡易訴訟代理等関係業務認定(第1512041号) 1級ファイナンシャルプランニング技能士 宅地建物取引主任者資格保有 行政書士資格保有

今やすっかり聞きなれた言葉となった『終活』。私たちはテレビや雑誌、インターネットのあらゆるところで終活という言葉に触れるようになりました。

その終活の一環として、遺言を書き残すことが挙げられると思います。家族の顔を思い浮かべながら、誰にどの財産を残すか考えて、いざ遺言を書くぞと決断するのはとても重要なことです。しかしながら、遺言には民法によって厳格なルールが存在します。そのルールの中からとりわけ、遺留分についての注意点と対策についてここではお話していきます。

そもそも遺留分は誰にどのくらい認められる権利なの?

遺留分とは相続の際、相続人のために必ず相続財産の一定部分を何らかの方法で保証するものです。

遺留分は相続人の権利ですが、兄弟姉妹が相続人になる場合、彼らには遺留分はありません。よってこの場合、遺言で「兄弟姉妹に財産を渡したくない」と記しておけば、彼らに遺産が渡ることを防げます。どのくらい認められる権利かというと、直系尊属(親や祖父母など)だけが相続人の場合、遺産の3分の1が相続人全員の遺留分、その他の場合は遺産の2分の1が相続人全員の遺留分となります。

たとえば、自分の両親だけが相続人なら、両親にはそれぞれ6分の1ずつ遺留分があり、自分の配偶者と子供2人なら、配偶者には4分の1、子供にはそれぞれ8分の1ずつ遺留分があります。ただしあくまで、遺留分を請求するかどうかは、各個人の自由意志によるもので、他の相続人の考えとは関係のないものです。また、遺留分を無視した遺言であっても内容としては有効です。

法律の改正により遺留分も遺言も制度が変わります!

遺留分の請求は必ずされるわけではないと前述しました。

例えば遺産が不動産だけの場合、遺産をもらえなかった相続人が遺留分を請求しようと考えたとします。遺留分を請求されると、現行法下では不動産は遺留分を請求した人との共有になります。しかし、その人にとって不動産の持分を得ただけでは意味がなく、売却をして現金にしなければなりません。そして売却をするためには、他の共有者と意見を一致させて手続きを進める必要があります。

そんなに複雑な手続きなら請求を諦めようと思った人は、これまで少なくなかったかも知れません。しかし、平成30年7月13日に公布された改正法では、遺留分を請求したら必ず金銭で払ってもらえるように変わります。そうなると、現行よりも遺留分の請求の敷居が低くなるかも知れません。また、直筆で書いた遺言(自筆証書遺言)についても、現行では遺言者の死亡後、相続人全員が家庭裁判所に呼び出されて開封する作業(検認)が必要でしたが、法務局で保管してもらえば検認不要に変わります。

遺言のルールはある程度厳格なままではありますが、各ご家庭へ遺言作成を促す改正だと思います。(※これらの改正は施行前です。施行前に法務局に遺言を持参しても保管してもらえません。また、法務局での遺言保管は所定の手数料がかかる予定です)。

遺留分を渡したくない場合の対策1.遺留分相当の財産をあげる遺言を書く

それでは、財産を渡したくない相続人がいる場合、どうすればいいのでしょうか。

もしもその相続人から遺留分の請求がされて、自宅が他の相続人と共有になってしまった場合、のちのち相続人全員が大変な思いをすることになってしまいます。また、改正法施行後であれば、請求をされたら金銭で払わなければならないので、足りない場合は、やはり他の相続人が苦労することになってしまいます。それならばあえて、遺留分くらいの価格の財産がその相続人に渡るように、遺言に記載するのもひとつの方法です。

遺留分を渡したくない場合の対策2.遺留分の請求をしないように遺言でお願いする

遺留分の請求をするかどうかは、その相続人次第です。いくら生前いがみ合い憎しみあっていたとしても、あくまで家族。なぜ自分がこのような遺言を書いたのか、その理由を併記しておけば、遺産をもらえなかった人も納得してくれるかも知れません。

【例】次男○○に何も残さないと決めたのは、社会人として自立して欲しいと思ったからです。お前が学生の時には大学の学費に加え、海外留学の費用も出してやった。結婚の際には自宅の資金も全額援助した。私が生きているあいだ、私たちのあいだには、つらいことや悲しいことがたくさんありましたね。でも愛しているし大切に思っているよ。どうかこれからは、自分の足で歩いて行って欲しい。(※この記載は付言事項といい、法的な拘束力はありません。記載したからといって、遺留分の請求を阻止できるものではありません)。

まとめ

相続手続きにおいて、遺言がないために遺産分割の話合いがまとまらないケースがたくさんあります。

長期間まとまらないままでいると、相続人にも相続が発生し、関係者がどんどん増えてしまいます。安心して人生の幕を閉じるためにも、残されるご家族のためにも、遺言は必須と言えるでしょう。

遺言作成の際には、遺留分の額がどれくらいになるのか、記載の方法はどうすればいいのか、専門家にご相談されることをおすすめします。せっかく遺言を残していても、法律にそぐわない箇所があることによって、思いがきちんと実現できない可能性があります。

私どもおおさか法務事務所でも、ご資産やご家族構成をじっくり伺い、ご希望に沿った遺言を作成するお手伝いができます。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。